前編では、今日までのFX業界の歴史を振り返った。後編では新たに導入された規制の意味を探ると同時に、今後の業界の将来像を展望してみたい。
前回も述べたように、金融庁が新たな規制導入に動いた背景には、世界的な金融危機下で進むFX業界の投機志向の高まりへの危機感があった。
以下3つの規制ルールは、それぞれ当局の危機感を色濃く反映している。
(1)ロスカット(損失限定のための強制決済)ルールの整備と順守
レバレッジ取引では、投下資金が少額でも、損失が予想以上に膨らむ危険がある。思惑が外れた時、投資家が取引から迅速に離脱できる仕組みは不可欠だが、金融当局の検査では一部にロスカットが十分機能していないFX業者が見つかったことからルール整備と徹底が図られた。
(2)金銭信託の義務化
旧規制では、顧客から預かった資産は、銀行の預金口座での区分管理や、カバー先金融機関への預託が認められていた。
しかし経営に行き詰まった一部FX業者で区分管理の甘さが発覚、さらに有力カバー先だった米金融大手のリーマン・ブラザーズが破綻(はたん)したことで、旧規制の問題点が露呈した。このため、より安全性が高い金銭信託への一本化が図られた。
(3)レバレッジ規制
8月1日から、レバレッジの上限が50倍に規制され、来年8月1日からはさらに25倍に抑制される。ただし規制対象は個人投資家で、法人顧客は含まない。
金融庁は過去の外為相場の変動率(ボラティリティー)から計算して25倍という数字を弾き出している。他の投資商品のレバレッジは、株の信用取引が3倍、商品先物でも約30倍だ。
ドル円相場はリーマンショック後の2008年10月24日に一日で7円以上、欧州危機が懸念された今年5月6日にも同じく6円近く動いている。
そうした中で高レバレッジ取引の事故が起きれば、FX業者の経営や外為市場をさらに不安定化させる恐れがある。
規制前には数百倍という高レバレッジを提供する業者が出現しており、この状態を放置すれば一段と過激な競争が起きていた可能性が高い。投資家や業界の反対を押し切って導入されたレバレッジ規制だが、ある意味やむを得ない部分もあったのは間違いない。
「レバレッジ規制を機にFX業界は縮小・再編に向かう」という観測が流れている。確かに、高いレバレッジを好む投資家が取引を抑制し、いわゆる「ネオFX」業者の取引量が減少する可能性はある。
しかし、ある証券会社の調査では、9割強の投資家が規制後もトレードを継続すると回答している。店頭FX業者の間では、第1弾の50倍規制に限れば、影響は限定的との見方が一般的だ。
取引量の増減は市場環境による部分が大きい。為替相場が大きく動いた今年5月の欧州信用不安時のように、投資家の関心を集めやすい局面が続けば、レバレッジ規制のマイナス要因を打ち消して、取引量は増加するだろう。
業者の財務面への直接的な影響という点では、むしろ金銭信託の義務化の影響の方が深刻だ。
今回の規制方針が公表されて1年が経過したが、店頭FX業者は107社から88社へと19社減少した。取材に対し、撤退した業者の多くが、金銭信託の義務化を理由に挙げた。金銭信託が義務化されると、カバー先に対して資金を「自腹」で預託しなければならず、取引量が拡大するにつれて財務が圧迫される。ある業者は、預かり資産の3割程度の「自腹」預託が必要になると試算している。
しかしながら、取引所取引ではこうした負担は生じない。大手店頭FX業者の取引所参入が相次いでいる背景には、金銭信託の問題が深く関係していると見られる。
取引所取引は投資家にとっても税制優遇があり、参入する業者はさらに増えそうだ。