ソチ五輪２０１４

フィギュアスケート女子シングル表彰式で銀メダルを胸に喜ぶ伊藤みどり（フランス・アルベールビル）

　「ジャンプの天才」伊藤が見せた、執念のトリプルアクセルだった。後ろ向きに滑りながらタイミングを計り、クルクルと3回転半。高く、大きな軌道を描く完ぺきなジャンプだった。五輪史上、女子選手が決めた初めてのトリプルアクセルでもあった。

　オリジナルプログラム前の練習で、突如3回転半を跳べなくなっていた。「金の有力候補」と言われ続けた精神的重圧が、のしかかってきたようだった。本番でも転倒し、4位。自由演技では、是が非でも3回転半を成功させねばならなかった。

フィギュアスケート女子シングルで銀メダルを獲得した伊藤みどりのフリーの演技（フランス・アルベールビル）（フランス・アルベールビル）

　開始早々、3回転を跳ぶはずが2回転に終わる。1分過ぎに3回転半に挑んだが、ここでも尻もちをついた。メダルは遠のいたかに見えた。そして迎えた3分すぎの勝負どころ。体力的に大技は困難とされる後半に、果敢に挑戦し、そして成功。着氷した瞬間、笑顔がはじけた。ぼやけていたメダルも、この時はっきり見えたに違いない。