提供:厚生労働省「依存症の理解を深めるための普及啓発事業」事務局

提供:厚生労働省「依存症の理解を深めるための普及啓発事業」事務局

   

バッドボーイズ佐田正樹さん、依存症啓発サポーターに就任

 

 

 厚生労働省では、依存症に関する偏見・差別を 解消し、依存症者や家族に対する適切な治療・支援に繋がる行動変容を促すことを目的に、「依存症の理解を深めるための普及啓発事業」 を実施しています。

 

 事業の一環として、依存症啓発サポーターに就任したお笑い芸人バッドボーイズの佐田正樹さんがインタビューに応じ、「大切な人のために、依存症に関する正しい知識を持ってほしい」と語りました。

 

 

 

 

―早速ですが、厚生労働省 依存症啓発サポーターに就任した理由やきっかけを教えてください。  

 

 今回、依存症啓発サポーターに就任させていただいたのは、「僕にだからこそできることがあるのでは」という想いからです。他に代わりが利く仕事なら「別に僕じゃなくても」となりますが、僕も40代になって、これまでの経験を基に誰か1人でも救うことができるのであればと思い、引き受けさせていただきました。

 

 

 

―「これまでの経験」とは?

 

 

 僕は芸人になる前、薬物に依存していた時期があったので、薬の怖さや、依存してしまう理由もやめるべき理由も何となく分かります。

 

 

 

―その時期のことについて、差支えない範囲でお話いただけますか?

 

 

 きっかけは地元の先輩から勧められてです。周りもみんなやっていたし、「自分だけ断って仲間外れになりたくない」と思ってしまい、断れませんでした。

 

 高校3年生のとき、総長をやっていた暴走族から引退して、自分が何をすればいいのかを見失っている時期でした。僕は、小さい頃にいじめられっ子だったことから、ずっと「強くなりたい。強くなればいじめられないんだ」と思っていました。そこから福岡県で一番大きい暴走族の総長になって、子どもの頃からの目標を達成してしまったような気持ちでした。暴走族を引退して、いつもつるんでいた仲間とも会わなくなり、心にポカンと穴が開いてしまった。

 

 

 

 

 そんな時に、先輩に誘われて、薬物に逃げました。「自分が薬物をやっていることがばれたくない」という怖さから、当時は辺り構わずけんかを売っていました。同時に「自首して捕まって楽になりたい」という気持ちもあるけれど、やっぱり自首できないし、親にも友達にも相談できない。でも薬が切れると怖くなってまた服用して、の繰り返しでした。

 

―その後、薬物をやめたきっかけを教えてください。  

 

 「芸人になって人を笑かしたい」「テレビに出て有名になってやるんだ」という目標ができたからです。あと、相方の清人が止めてくれました。「本当にお笑いで天下取るのを目指すのであれば、薬やっていたらできないだろう」と。ああ見えて芯の強い男です。それで止める約束をして、本気で芸人としての活動をスタートしました。

 

 

 

―今周囲に、アルコール・ギャンブル・薬物等をやめられずに困っている方はいらっしゃいますか?

 

 

 芸人仲間にギャンブルをやめられない後輩がいました。お金が無いからギャンブルで稼ごうとして負けて、さらにお金が無くなってという悪循環です。ギャンブルに負けると悔しいから、それを取り返そうと思ってしまう。だから止められない。その後輩には、ギャンブルよりも楽しいことがあると教えました。「この時間をこれに変えれば、お金も使わないよ。どっかでピリオドを打たないと」と。

 

 

 

 

 依存症にはいろいろな種類があって、依存してしまう理由も人によってさまざまだと思いますが、経験上、依存状態にある方は「悪いことをしている」という後ろめたさから、嘘をつくようになってしまう。それによってさらに周囲から孤立してしまいます。そういう方が「もう自分なんてどうでもいいんだ」とならないように、手を差し伸べてあげる人がいれば、依存から立ち直るきっかけの一つになるのではないでしょうか。僕の場合は、夢を持つことで依存状態から抜けられました。人は一人じゃ生きられないと思います。だから、「誰かのために頑張ろう」と考えてほしい。「自分なんて」ではなくて、「自分が誰かを幸せにしてやる」という思考回路になることが、依存から立ち直るための一歩を踏み出す勇気につながると思いたい。

 

 

 

―依存症に対する周囲の誤解や偏見の目が、当事者が治療に繋がりにくい要因の一つになっていると考えられています。

 

 

 「依存症なんて自分には関係ないこと」と思うかもしれません。でも、「もし自分の家族や大切な人が何らかの依存症になったときに、自分はどうするか」ということを、一度想像してほしいです。実際にそうなった時、依存症についての正しい知識を知らないよりは、知っている方が絶対に良いと思います。何よりも、「自分とその周りだけ良ければいい」という人よりも、依存症の方にも寄り添える人が増えれば、より明るい社会に近づくのではないかと思う。

 

 

 

―芸能界では特に、アルコールや薬物等の問題で一度“失敗”してしまった人が、再度出てくるとたたかれる傾向があるように感じます。

 

 

 一度薬物で“失敗”した芸能人が復帰することをバッシングするような人達のことを、僕は「暇人」と呼んでいます。「自分が生活している中で、他人のやっていることをバッシングするなんて、どんだけ時間あんの」と思います。そういう人が、違うベクトルを持って何か別のことをやれば、世の中はより良くなるんでしょうけど。そういう人は、誰かを傷つけて攻撃してしまう分、薬物に依存している人より質が悪いと思います。違法薬物を摂取する人は、誰かを傷つけようとはしてなくて、自分を傷つけている。依存症啓発サポーター失格といわれてしまうかもしれませんが、僕は、他人に迷惑さえかけなければ、たとえそれが犯罪だとしても、何をやってもいいと思っています。だから僕は、薬物で捕まった人に対して何とも思いません。薬物をやったことで、誰かに危害を加えたり不幸せにしたりするのであれば、もちろん良くないですけれどね。「依存するから駄目」というのであれば、合法であるアルコールも駄目ですし。でも、違法薬物は国の法律で違法ですし、捕まるのが嫌なら、薬物よりも楽しいこと見つけた方がいいというだけです。本当にやってはいけないことは、人を傷つけることだと僕は思います。

 

 

 

 

 依存症の方には、「自分なんてもう終わりだ。どうなってもいい」と思っている方が多いのではないでしょうか。そういう方に「まだまだ人生長いし、まだまだ変われるよ。まだまだあなたを必要としている人間はいるよ」と伝えたいです。別に、今すぐ止めなくてもいいし、強くなろうとしなくてもいい。でも、もっと楽しいことをやってほしい。せっかく一度きりの人生なんですから。

 

 

 

―依存症啓発サポーターになったことをきっかけに、何かしたいと思っていることはありますか。

 

 

 サポーターとして、依存に苦しむ方一人ひとりと顔を合わせてお話しする機会があれば、ぜひお話しをしたいです。それが難しければ、セミナーなどで、皆さんの顔を見ながら、僕なりの言葉でお話をさせていただきたいです。

 

 僕基本的に、文字だけのやり取りは嫌なんです。ちゃんと会って本気で話をして、顔を見てこちらの誠意を伝えたいし、相手を理解したいです。僕は子どもの頃から、頭ごなしに「駄目だ」と言われるのが嫌でした。学校で先生に「違反の制服は何で駄目なのか?」と聞いても、「ルールだから」という答えしか返ってきませんでした。納得できるように説明されたらやっていなかったけれど、納得できるほど説明してくれる人にも出会えなかったから、歯向かい続けました。理由をちゃんと説明すれば理解し合えるのが人間だと思う。相手に理解してもらうのは誠意と根気がいることですが、人間として面と向かいたいと思いますね。

 

 

 

 

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